春は来ないと、彼が言った。
8月の雪
冬がやって来た。
―――時は、8月。
「ああもう、寒いよーっ!!積雪1メートルってなんで!?」
ざくざくと音を立てて、雪に覆われた道路を進む。
傍らにそびえる厭味なまでに純白の壁を睨み付け、ぐちぐちと悪態を吐いた。
いくら既に雪掻きが行われたとはいえ、地面はしっかり凍っているため安心はできない。
ましてやブーツでも長靴でもなく、学校帰りのローファーなんて。
尚更、転倒する可能性が高いはず。
制服に合うのはこっちだから我慢しなきゃ、なんて自分に言い聞かせながら溜息を吐いた。
…吐く息の白さったら、ほんとにない。
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