春は来ないと、彼が言った。


今日から夏服だ。


時間に余裕のあった今朝は、ブレザーを秋冬物用のクローゼットにしまうことができた。

代わりに半袖のブラウスを引っ張りだし、リボンも夏らしい水玉に変えてみた。


いつもより少しだけ早く家を出て、いつもよりのんびりと歩く。

しかし朝とは言え、既に日射しはかなりの強さだった。



「…眩しっ……日焼け止めいるかも…」



一歩外にでただけで襲い掛かってくる暑さにうんざりしながらも、少しだけ嬉しい気持ちになる。


明日になれば耳障りでしかない蝉の声も、今だけなら可愛く思えた。


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