春は来ないと、彼が言った。
やっぱり冬は静かすぎる。
あのどうしようもなく閑寂で静謐な感じは心細い。
それに比べて夏は常に騒がしいというのか、自然と気分も高まってくる。
…通学路の並木道で大量の蝉の抜け殻を見付け、ちょっと気持ち悪くなってしまったけど。
足に纏わり付くスカートも、夏用なだけあって風通しが良い気がした。
触ってみた感じもさらっとしていて、やっぱり心が弾む。
いつもより細やかに街の風景を観察しながら、わたしは幾分か軽い足取りで学校へと向かった。