春は来ないと、彼が言った。


「「椛ちゃん、おはよう」」



教室に入るなり、目敏く彼らはわたしを見つけてくれた。

全く同じ言葉を向けてきた妃ちゃんと藍くんに挨拶を返し、自分の席に着く。



「………?」

「…………」



2人が不思議そうに首を傾げたのを一瞥し、曖昧に笑いかけておいた。

いつもは時間まで妃ちゃんとお喋りをするけど、とても今はそんな気分にはなれない。


ちらっと斜め前にある恢の席に目をやると、そこに恢の姿はなかった。


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