春は来ないと、彼が言った。
―――それから、何分経ったのか。
待てども待てども恢の姿は見えず、教室の扉を穴が開くほど見つめ続けていた。
結局、登校してきたのはチャイムが鳴ったのと同時だった。
「(…今からじゃムリだよね…)」
1時間目の英語の教師が入ってきたことで、クラスのおしゃべりも強制終了となる。
諦めて左手で頬杖を付き、溜息を吐いたときだった。
必然的に、右隣に座っている睦くんが視界に入る。
それだけじゃなく、なんとも間の悪いことにばっちりと目が合ってしまった。