春は来ないと、彼が言った。


怒る?水に流す?

い…いっそ、理由を問い詰める?


正直に言うと、そんなに腹を立てていたわけじゃなかった。

なにせ、比べるのも可笑しな話だけど恢にされたことの方が断然インパクトが強い。



く…首筋に、ちゅってされ…され、て…!!



顔が赤くなるのがわかり、睦くんに見られてはなるまいと防衛本能が働く。

ぎくしゃくした動きで頬杖を右手に変え、特になにも無いのに熱心に窓の外に神経を注いだ。


…それでも尚、わたしを見てくる睦くんの視線が横顔に突き刺さって痛かった。


< 109 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop