春は来ないと、彼が言った。


……えっ。



財布を探す手が思わず止まる。

弾かれるように恢を見ると、お互いの視線がばちっとぶつかった。



「椛、わかりやすすぎ」



破顔した恢にくしゃりと頭を撫でられ、わたしの顔は燃えるように熱くなった。

恥ずかしいくらい赤面してるのが、熱で伝わってくる。


どきんっ!


大きく高鳴った心臓の音が、はっきりと耳に届いた。



「(………あっ)」



無意識のうちに服の上から、ぎゅっと痛いくらいに心臓を押さえていた。




……な、なにこれ。



心臓…す…すごく、バクバクしてるっ…!



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