春は来ないと、彼が言った。


べたーっと机に顔を伏せて唸っていると、制服の袖がくんっと弱い力で引かれた。


のそりと顔を上げると予想通り、妃ちゃんが立っていた。



「椛ちゃん、恢くんは?」



ぎくーっ!


どう足掻いても避けられないとはわかっていたけど…!


くりくりの澄んだ瞳でわたしを見つめる妃ちゃんを真っ直ぐ見ることができない。

…な、なんて言おう…。




あーでもないこーでもないとぐるぐる思考を巡らせていると―――

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