春は来ないと、彼が言った。


…その瞳の奥に宿るどす黒い感情に、わたしはとっくに気付いてるんだけど。


命が大切なわたしが首を横に振るなんて以ての外。

そもそも拒否権なんてないくせに…!



「わ、わかり…まし…た…」



語尾がだんだん小さくなってしまうのくらいは見逃して欲しい。



これ以上なく機嫌を悪くしてしまった妃ちゃんに、心の中で何度も謝罪をしておいた。

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