春は来ないと、彼が言った。


心に浮かんだその考えが、急激に頭の芯を冷やす。


わたしは漠然と思っていた。


恢が勝手に不機嫌になって、わたしはなにも悪くなくて。

理不尽だなぁなんて思いながら、小さな喧嘩でもしてるような気がしてた。




―――でも。




徹底的に避けられ続け、話すどころか目さえ合わせてもらえない。

繋がりの一切を絶つように、メールと電話を拒絶された。







これが、本当にただの喧嘩?



ひんやりとした刃物が首筋に突きつけられたような錯覚に陥る。


冷や汗が背中を滴り落ちていく。





……ちがう。


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