春は来ないと、彼が言った。


どくんっ!!




開けっ放しの教室の扉の前に、睦くんがぽつんと立っていた。

職員室に行くって、さっき言ってた。



「ぁ…、り…睦くんっ…!」



泣いているところを見られたことが、ひどくわたしを焦らせた。


どう言い訳しようかとあたふたしている間に、睦くんが真っ直ぐこちらに歩いてくる。

目の前にまで来てしまった睦くんを見れず俯いたまま押し黙った。


視界に、睦くんの脚だけが映る。


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