春は来ないと、彼が言った。


「……お、遅かったね」



苦し紛れだ。


そんなことはわたしが一番わかっていたけど、沈黙だけは避けたかった。



「………泣いてたの?」

「っ…」



呆気なく無視されてしまった。


しかも的確、だ。

一目瞭然だとしても肯定することができなくて、ましてや顔を上げることなんてできない。


もどかしさから唇を噛むと、睦くんがおもむろに口を開いた。






「恢の所為、だよね」

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