春は来ないと、彼が言った。
―――っ!!!!
なにも言い返せなかった。
その通りです、と言わんばかりに目を見開いて硬直する。
…自然と、顔を上げていた。
わたしを真っ直ぐ見ていた睦くんと視線が絡み合う。
「……目、腫れてるよ」
睦くんの親指の腹が、優しくわたしの眦を滑った。
いつの間にかぐっと近付いた距離を気にする余裕はない。
なんでだろう……呼吸がうまくできない。
周りの酸素が無くなってしまったように、息苦しい。