春は来ないと、彼が言った。
「っ、…なにも…」
わたしの無駄な抵抗を睦くんが小さく笑った。
柔らかな髪をくしゃりと掻き上げた睦くんの端整な顔が、吐息がぶつかるほどに近付く。
どくりと、心臓が悲鳴を上げた。
反応できずに固まっていると、今度こそ我慢できなくなったように睦くんが吹き出した。
「ぷっ…あはははははははっ!驚きすぎだよ!…でもま、今ので恢となにがあったのかなんとなくわかっちゃったけど」
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