春は来ないと、彼が言った。
恢と半分こしようにも、まず2つに割ることが出来ないわたしを見兼ねたらしい。
自分のあんまんをはむっと口にくわえ、
ビニール袋をぶら提げた右手と左手を使い、肉まんを綺麗に真っ二つに割った。
なんでもかんでもやってもらってることが途端に恥ずかしくなったけど、
恢はそんなわたしの心などお見通しだと言わんばかりに額を軽く小突いた。
「余計なことは考えなくて良いんだよ、バカ椛」
「………あり、がと」
半分になった肉まんに火傷しないよう注意深くかぶりつき、口の中に広がる旨味をぎゅーっと味わう。
はふはふと声を漏らしながら、熱の籠った白い息を吐き出した。