春は来ないと、彼が言った。


「椛ちゃん?」

「っ、なんでもないよー!」



睦くんに見られないように、制服のポケットにぐしゃりと音を立てて押し込んだ。


…なんの価値もないのに。

もう、願い事だって叶わない。


それでも全てを棄てきれないのは、



「………わたしのエゴ」



くすりと漏れたのは嘲笑か。

それとも、
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