春は来ないと、彼が言った。
「ねぇ椛ちゃん、暑いから帰りにアイス食べて行こうよ!」
鞄を肩に引っ掛けた睦くんが、首筋の汗を拭いながら言った。
「わぁ、いいね!わたしソーダ味好きだなぁ。でもいちごも美味しいよねっ」
「あははっ!両方買えば良いよ、お腹壊さないようにね」
「…………うんっ♪そうしようかな、楽しみ!」
―――恢なら、こういうとき。
“んじゃ俺がいちごで、椛がソーダな。半分こでいいだろ?”
って、笑うんだ。