春は来ないと、彼が言った。


「んー、すっごく美味しいっ!!」

「だなっ!やっぱ買い食いは良いよな、それだけで美味く感じるっつーか」



恢は嬉しそうに子供っぽい笑みを浮かべ、わたしにあんまんの片割れを差し出した。


お礼を言って受け取ると、ふと思い出したように恢が言った。



「…そういや、最後に春が来たのはいつだっけ?」



いきなりどうしたの?

唐突すぎる質問を不思議に思ったけど、ふむ、と顎に手を当てて思案する。


よくよく考えてみると、4月の頃からずっと夏、秋、冬をランダムに繰り返している気がした。




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