春は来ないと、彼が言った。
そんな数々の思い出を掻き消すように。
恢に選んでもらった薄桃色のカーテンを、力強く思いっきり左右に引っ張った。
「うわっ…!!」
勢いよく瞳に飛び込んできたのは、まばゆい光。
全く気付いてなかったけど、昨日の夜に少し雨が降ったみたいだ。
露に彩られた草木が朝日を浴びて、キラキラと宝石さながらに光り輝いていた。
道路にできた小さな水溜まりも、陽光を反射していて眩しい。
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