春は来ないと、彼が言った。
「(…全部がキラキラしてる…)」
階段を上る間にも色々な写真や絵、銅像等を鑑賞できる。
ここは美術館じゃないかって思わず錯覚するくらい豪勢なんだよねぇ…。
「なーにキョロキョロしてんだか」
ハッとして前を見れば、恢が首だけで振り返り、バカにするように口角を上げていた。
「い…良いでしょ別にっ!」
「っ痛ぇ!」
笑われたことが恥ずかしくて、照れ隠しの意味を込めて恢の背中をバシッと叩いた。
身体を僅かに揺らし、恢はうっと呻き声を漏らす。
「暴力反対だー」
なんとも幼稚な言葉を返してきた恢の背中をもう1度叩くと、諦めたようにおとなしく前を向き歩き出した。