春は来ないと、彼が言った。
へらりと緩んでしまった口元を慌てて引き締めると、睦くんが小さく笑いを零した。
「椛ちゃんってほーんと、恢が好きだよね」
なんの躊躇いもなく言われ、ぴしっと固まってしまった。
え、ええっ、好、す、すす、好、きって…!?
顔から火が出て脳みそが沸騰してるんじゃないかってくらい、熱い。
口をぱくぱくさせて睦くんを凝視していたため、足元がお留守になっていた。
ずるっ。
「ひゃっ…!?」