春は来ないと、彼が言った。


これが普段の喋り方だから、特になんとも思わない。

初めは嫌われてるのかと不安になったけど。



「ひ、妃ちゃんの方がずーっとずーっと可愛いよ!?」

「そんなことないよ」

「ええええっ!?妃ちゃんに言われてもわたし、困るっ…!」

「ふふ。そういうところが可愛いの」



僅かに顔を綻ばせた人形のように可愛らしい微笑に心をぎゅむっと鷲掴みにされた。

か、かかかかか可愛い…!!


切り揃えた前髪をふわりと揺らし、妃ちゃんは突然ふわりと立ち上がった。


どうしたのかと思いつられて顔を上げると、とことことわたしが座っている席の前まで来た。




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