春は来ないと、彼が言った。
わたしに肉まんを譲ってくれるのはいつものことで、少し申し訳なくなる。
言ったところで、恢は絶対にあんまんを買うんだけど。
優しい、なぁ。
「ちゃんと半分こだよ!」
なのにわたしは、可愛げのないことばっかり返しちゃって。
恢はうんざり、しないのかな。
「わーってるよ。ほら、コンビニ見えたぞ」
黒い革の手袋でついっと指差した彼方には、コンビニの大きな看板が堂々と構えていた。
インパクトのあるロゴの周りには24Hという文字に加え、四季を表すマークが描かれている。
「そういえばさぁ…今更だけど、コンビニって四季営業なんだよね。すごいなぁ…」
感心したようにほう、と呟けば恢も小さく頷いた。