春は来ないと、彼が言った。
その顔を直視できなくて、わたしは思わず目を逸らす。
「両想いになれますように」
「―――――っ!!!!!!り、睦くんっ!!!!」
叫ぶように声を張り上げると、意地悪な笑みは崩さず唇のみを歪め、睦くんは声を出さずに笑った。
悪魔みたいだ、漠然とそう思う。
しかもわざわざ声を低くして言うところがえげつない。
性格の悪さが滲み出てるよ…と胸の内で悪態を吐くと、急に睦くんの目が細まった。
…心の中を読まれたんじゃ、なんてあらぬ心配をしてしまう。