春は来ないと、彼が言った。
それだけ睦くんの眼光には、ちょっと不思議な力があるから。
「わかりきってるくせに相手の名前を書かないのが、椛ちゃんっぽいよ」
そ…それは、わたしが根性ないってこと…?
カチンときた表情を露にしすぎたのか、睦くんは物珍しげな視線をわたしに向ける。
…その瞳は、何故か嬉々として輝いていた。
「可愛いって言ってるんだよ。…あーあ、オレにしちゃえばいいのに」
ふわり、と。
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