春は来ないと、彼が言った。


「よく覚えてるね!そうそう、あのときは酷かったよ。4月中に季節が3回も変わっちゃって」



今となっては軽い笑い話だけど、当時は大変だった。


せっかく買いだめしたアイスが食べれなくなっちゃうし、こたつは仕舞ったばっかりで。


暑さにも寒さにも上手く順応できなくて、わたしは始業式が終わって早々に熱を出して欠席した。

恢がお見舞いに来てくれて、りんごを剥いてくれたんだっけ。


そんな思い出に浸っていると、恢はドリンクコーナーの方にふらりと姿を消した。

これもいつものことだから、特に気にしない。




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