春は来ないと、彼が言った。


張り上げた怒声が、水を打ったように静まり返った教室に谺(こだま)した。


耳の奥で恢の言葉が何度もエコーする。


春は来ない?

どうしてそんなに怒ってるの?

なにを考えてるの?



…ぞくり、と。


背筋が粟立ち、得体の知れない感情が膨張した。


怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。


こわい。


恢のことは大好きなのに、今、目の前にいる恢は。



好きじゃ、ない。


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