春は来ないと、彼が言った。
恐怖心だ。
他の誰でもない、恢への。
「はな、してっ…」
懇願するように喉を震わせると、恢の顔がぐっと近付いた。
さっきまで恢は膝立ちだったのに、気付くとぴったりとわたしに覆い被さるようになっていた。
服と服が擦れ合う、衣擦れの音が耳朶を掠める。
吐息が首にかかった。
…頭がくらくらしておかしくなりそう。
「か、いっ…!」
「……そんなに願い事叶えたいのかよ」
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