春は来ないと、彼が言った。
肉まんに負けじと美味しそうな匂いを漂わせているホットスナックの棚をじっと見ていたら、ホットコーヒーの缶を手にした恢が1分と置かずに戻ってきた。
その手にはいつの間に選んだのか、美味しそうなお菓子がいくつも抱えられている。
「恢って意外と甘党だよね」
「…うるさい。コーヒーはブラックだからな」
「あはは、知ってるって」
レジにどさりと商品を乗せると、笑顔を貼り付けた店員がパタパタとやってきた。
いつ来てもこの人がいるってことは、店長なのかな。
そんなどうでも良いことを考えた。