春は来ないと、彼が言った。


今まで一度も聞いたことがない声。


これ以上は聞きたくないのに。

耳を塞いでしまいたいのに。


身体はまるでわたしを主人だと認めていないように、言うことを聞かない。




くちゅ、と首筋で水音が鳴った。




「っ、ぁ…!」



そこに恢の唇が寄せられているとわかり、失いかけた羞恥心が甦ってくる。


顔が熱くなるのと同時に、身体の中心も僅かに熱を帯び始めた。



「はな……椛…」



また掠れた声で恢が名前を呼ぶ。

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