春は来ないと、彼が言った。
くちゅ、ちゅうっ。
耳障りな水音が耳を犯す。
恢の唇が首元から離れる気配は一向に感じられない。
いつの間にか、わたしの呼吸が荒くなっていた。
「……ぁ、んぅっ…」
自分の声じゃないみたいで、今ここにいるのが本当にわたしなのかわからなくなる。
恢の唇が這うたび、蒸気のように熱い吐息が触れる。
時折やってくるざらりと濡れた感触は、もしかして舌なのか。
そんなことをぼんやりと考えていると、チクリと小さな痛みが首筋に走った。