春は来ないと、彼が言った。


追いかけたいのに。


足はガクガクと震えるばかりで、力が入らない。

先ほどの行為ですっかり滾った熱が、わたしを卑しい存在だと蔑んでいる気がした。



「かいっ…恢、恢っ…!!」



縋るように名前を呼び続ける。


キスされそうになったのが嫌だったわけじゃない。

怖かっただけ。

突然のことに頭が追いつかなかっただけ。

恢が嫌いなわけじゃない。


違うの、違うのに!!


なんで…どうして恢に伝わらないの!!

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