俺様生徒の甘いくちづけ


「美桜はなるわけないって言うけど、そんなの誰にもわかんないわよ。恋なんてするモノじゃなくて…落ちるモノじゃない?気がついたら相手のことを好きになってて、恋に落ちゃってるのよ」


佳奈が空になったグラスにチューハイを注ぎながら、ふと…そんなことを言った。


佳奈の言ってることはわかる。




恋は電光石化の早業みたいなモノだから。




相手をパッと一目見ただけで一目惚れすることだって……ある。


思えば、あたしがたっちゃんを好きになったのだって…一目惚れだった。


恋をしようと思わなくても、恋に落ちることはいつも突然で。



「だけど、五十嵐くんとあたしは絶対にそんなんじゃないからっ!」


「ハハッ!美桜、ムキになりすぎっ!」


「佳奈こそ笑いすぎだし」


「ゴメンって。でも、ちょっと安心しちゃった。美桜が元気になってきて…」


「……ありがと」


あたしにだってわかってるんだよ。


佳奈がただの合コン好きじゃないこと。それにあたしのことを気にかけて、いつも誘ってくれてることぐらい。


「美桜が急にしおらしくなって、なんだか気持ち悪いんですけど」


「人が素直にお礼言ってるのに佳奈のバカッ!」


「クスッ。でも美桜には…また恋して欲しいって思ってるから」



佳奈のその言葉が胸にジーンと響く。


少し前のあたしだったら、きっと聞く耳も持てなかった言葉。


少しずつだけど時間が、いろんなことを解決してくれているのかも……。



そんなことを思った。


< 41 / 104 >

この作品をシェア

pagetop