俺様生徒の甘いくちづけ
「美桜はなるわけないって言うけど、そんなの誰にもわかんないわよ。恋なんてするモノじゃなくて…落ちるモノじゃない?気がついたら相手のことを好きになってて、恋に落ちゃってるのよ」
佳奈が空になったグラスにチューハイを注ぎながら、ふと…そんなことを言った。
佳奈の言ってることはわかる。
恋は電光石化の早業みたいなモノだから。
相手をパッと一目見ただけで一目惚れすることだって……ある。
思えば、あたしがたっちゃんを好きになったのだって…一目惚れだった。
恋をしようと思わなくても、恋に落ちることはいつも突然で。
「だけど、五十嵐くんとあたしは絶対にそんなんじゃないからっ!」
「ハハッ!美桜、ムキになりすぎっ!」
「佳奈こそ笑いすぎだし」
「ゴメンって。でも、ちょっと安心しちゃった。美桜が元気になってきて…」
「……ありがと」
あたしにだってわかってるんだよ。
佳奈がただの合コン好きじゃないこと。それにあたしのことを気にかけて、いつも誘ってくれてることぐらい。
「美桜が急にしおらしくなって、なんだか気持ち悪いんですけど」
「人が素直にお礼言ってるのに佳奈のバカッ!」
「クスッ。でも美桜には…また恋して欲しいって思ってるから」
佳奈のその言葉が胸にジーンと響く。
少し前のあたしだったら、きっと聞く耳も持てなかった言葉。
少しずつだけど時間が、いろんなことを解決してくれているのかも……。
そんなことを思った。