俺様生徒の甘いくちづけ
「……帰っちゃったぁ」
五十嵐くんがいなかったら…あたし、どうなってたんだろう。
玄関先で倒れたままだったのかな?
それに倒れたままだったら、熱が上がって…どうにかなってたかもしれないし、一人だったら心細くて寂しかったと思う。
「冗談ばっかり言うから、ちゃんとお礼言えなかったけど……ありがと」
きっと…今、寂しくないのは
俺様な…アイツのおかげ。
ただの俺様で、しつこい生徒だってずっと思ってたけど、優しいところもあるんだ。
おでこに手をあてると、不器用に貼られた冷えピタにまた優しさを感じて、胸がジンジン…と温かくなっていくのがわかる。
「……クスッ。どんだけ不器用なの」
その夜、あたしは瞼を閉じると、そのまま朝までぐっすり眠っていた。