俺様生徒の甘いくちづけ
でも、部屋の中に入っても、たっちゃんはいつも座るオレンジの椅子には座らないで、相変わらず立ったままだった。
『たっちゃん?』
『…………』
ライトの下で、たっちゃんの長いまつ毛が頬に影を落としている。
綺麗なんだけど、どうしてだか…この時はそれがとても悲しそうに見えた。
そして、あたしから視線を逸らしたまま…たっちゃんが急にこう言ったんだ。
『美桜、俺と別れて?』
『……っ』
すぐに言葉が出てこなかった。
『なに言うの?もう…冗談キツいよ』
そう言ったけど、たっちゃんはそんな冗談なんて言わない人。
だから、すぐに本気なのがわかって怖くなった。