シュガー × シュガー
広瀬先生のはんこをもらい
出入口で伊織を待った。
いつもだいたい早く来ている伊織が
今日はまだ来ていなかった。
少しの間待って
あたしはあることに気づく。
…携帯が、ない!
確か教習が始まるときに
コートの右ポケットに入れたはず。
何気なく手を入れてみると
ポケットはからっぽだった。
するとちょうど歩いてくる伊織が見えた。
「伊織!」
「あ、玲美!今日早かったね」
「うん。でも携帯忘れたみたいで…教習車見てくるから先に行ってて」
「わかったあ」
あたしはまた、さっき乗った教習車まで戻った。
次の時間、乗車の人たちが
続々と集まって来ていた。
早く戻らないと。
ドアを開けて車内を見る。
ふと見ると、助手席には
誰かの教習ファイルが…。
色からして合宿生だとわかった。
でも肝心な本人は?
ファイルだけ置いて、どこに行ったんだろう。
そんなことより携帯…
どれだけ見ても、シートの下に手を入れてみても
…なかった。