シュガー × シュガー

「…西野、せんせ」


声が震えた。


「これ、平岡さんの？」


その手には見慣れたピンクの携帯が。

なんで西野先生が？？



「そうです。ありがとうございます！でもなんで先生が？」


「さっき合宿生の男の子が、教習車に忘れ物がありますって持って来てくれたんだ」

そうだったんだ。

じゃあ、助手席に置かれてたあのファイルの持ち主が？

わざわざ、受付に届けてくれたんだ。



「よかったね！」

先生から手渡された携帯、
少し温かかった。


「よかった…なくなったかと思って…ほんと、よかったあ…」

携帯が戻ってきた嬉しさと
西野先生と話せている嬉しさが混ざって、言葉がとぎれとぎれになってしまう。




よしよし、と言って先生はどこかに行ってしまった。



迎えの時間が迫る。




先生を追いかけたかった。


先生がどこに行くかもわからないのに。


迎えのバスもそろそろ出るのに。



「玲美！」

伊織に肩をぽんと叩かれ
あたしは走った。


まだ、その辺にいるはず。

階段を駆け降りて
ロビーを見渡した。


でも、いないみたい。