シュガー × シュガー
「うおっ!?びびったあ…って、平岡さん!?吸うの?」
先生は勢いよく開いたドアにびっくりしてこっちを見た。
「す、すいません…」
「えっ、それは"ごめんなさい"のすいません?それともタバコ"吸わない"のすいません?(笑)」
おどけた先生の笑顔と
八重歯。
なんだかすごく愛おしかった。
いますぐにでも、
抱き着いてしまいたかった。
あたしははっとして
恥ずかしいのと答えに困ったのとで
うつむくことしかできなかった。
そして、
ごめんなさい
と言った。
先生は、煙をふーって吐き出して
それからタバコをキュッて縮めて捨てた。
「どしたの?」
優しい目で、優しい声で
あたしに向けられた"西野先生"。
言ってはいけない2文字を
無意識に言いそうになったのを
必死で堪えた。
先生のことを見れなかった。
ヴーッ
重苦しい沈黙の中
重苦しいバイブが鳴る。
伊織からのメールだった。
"送迎のバス、時間ずらせたよ!"
涙が落ちそうだった。
"ありがとう"
手が震えて、絵文字も顔文字も
つけられなかったけど
すぐに返信した。
「座ったら?」
先生が手でベンチをたたく。
一瞬ためらったけど…
申し訳なさそうに
あたしは図々しくも
先生の隣に腰をおろした。
心拍数は最大値を超えていて
先生に聞こえるんじゃないかってくらいうるさかった。
先生は、二本目のタバコに火をつけた。
もう少しここにいるんだ
と思ってほっとした。