シュガー × シュガー




なかなか聞けなかった。


それなのに。

全部見透かされてるように。

先生は言った。



「まさか平岡さんが車好きだなんて」



やっぱり…。


「女が車なんて…引きました?そういう雑誌買う女とかいませんよね、あははっ」


もうどういうふうにでも
開き直れる。

なに言われても大丈夫。








だけど

先生は

いつも上手に

あたしの心に入り込む。





「確かになかなかいないね(笑)けど俺、自分が車好きだから、車好きな女の子好きだよ♪」



おにぎりをかじりながら、

窓の外を見ながら、


好きだよって


先生が言った。





あたしが好きなわけじゃない。


"車好きな女の子"が好きなんだ。



そういうくくりだとしても
そこには自分が入っている。


だから、嬉しかった。






「ちょっ!?どした?なんで泣いて…」


えっ、嘘!あたし
なんで泣いてんの?



「大丈夫?えっ?なんでっ?ごめん、大丈夫?」


先生はパニックになってそれだけを繰り返した。


ほんとに優しい…。



「ち、違うんです。ごめんなさい」


それだけ、やっと言えた。




言えたと思えば、
先生はあたしの頭を
よしよしって撫でてくれた。




「ビビったぁ。大丈夫?…何かあった?」



嬉しくて泣けてきたとは言えず、
大丈夫ですと何回も言った。





優しい先生。
そのおっきい掌が、
あたしを包んでくれた。


心が満たされて
もう死んでもいいって
本気で思った。



そもそも先生と
先生の車で二人っきりとか
この上ない幸せだ…。





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