恋する魔女
「オズワルド、もういいだろう。」




寂しげに二人を見ているオズワルドの肩に、手を添えるドーラ。




「あぁ。・・・そうだな。」




本当は、初めから反対する気持ちはなかったオズワルド。




ドーラがいいだけ彼を試したことも聞いていたし、ジュリアが言うように、自分が彼女の人生に口を出そうとは思っていなかったからだ。




この世界のトップであるオズワルドのポジションは、仕組みからして世襲ではない。


力が強く、トップとしての器があるかどうかで決められる。


そのため、姫であるジュリアが跡を継がなくてはならないという決まりはない。




オズワルドが危惧していたのはそこではなく、単純に、異世界で暮らすことになるであろう娘の身のことだった。




「寂しい思いをさせてしまっていたが、わしにとっては掛け替えのない大切な存在だ」




出来れば、この世界の男と、何も苦労も知らずに生きていってほしかった。




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