Cold Phantom [後編]
パスポートの確認が終わると、またバスが動き出した。
ここから先は外国であるが、その先にも日本人は多く実質は日本市国とそう変わらない。
違いがあるとすれば、純粋な日本人の多い日本市国に比べれば白人やハーフ、クォーターが圧倒的な数である事と言うくらいの違いだろう。
地毛や瞳の色の僅かな差こそあれ、日本語は通じるのだから、外国と思った事は無い。
それに日本市国にも大家のマリアさんのようなイギリス人と日本人のハーフもいる。慣れたものだ。
国境を越えた先は鏑木(かぶらぎ)と言う小さな村で、かつて日本市国が大阪と呼ばれていた時代の唯一の村の戦後の名前である。
「姫納先輩。」
不意に呼ばれた。その声は隣に座っていた犬塚さんの声だ。
「どうしたの?」
「私達の行く合宿所って鏑木に入ってしばらくの所にあるんですよ。もうそこまで遠くないと思いますよ。」
「へぇ、そうなんだ。そんなに遠い場所でも無かったんだね。」
そう言って付けていた腕時計を見ると、出発から一時間半ほどしか経っていなかった。
「それでですね…ちょっと耳を近づけてください。」
言われて私は耳を近づけた。内緒話のようだ。
「まだみんなには触れ回ってないんですけどね。私達の行く合宿所の近くにですね、地元でも知る人ぞ知る有名な廃屋敷があるんですよ。」
ここから先は外国であるが、その先にも日本人は多く実質は日本市国とそう変わらない。
違いがあるとすれば、純粋な日本人の多い日本市国に比べれば白人やハーフ、クォーターが圧倒的な数である事と言うくらいの違いだろう。
地毛や瞳の色の僅かな差こそあれ、日本語は通じるのだから、外国と思った事は無い。
それに日本市国にも大家のマリアさんのようなイギリス人と日本人のハーフもいる。慣れたものだ。
国境を越えた先は鏑木(かぶらぎ)と言う小さな村で、かつて日本市国が大阪と呼ばれていた時代の唯一の村の戦後の名前である。
「姫納先輩。」
不意に呼ばれた。その声は隣に座っていた犬塚さんの声だ。
「どうしたの?」
「私達の行く合宿所って鏑木に入ってしばらくの所にあるんですよ。もうそこまで遠くないと思いますよ。」
「へぇ、そうなんだ。そんなに遠い場所でも無かったんだね。」
そう言って付けていた腕時計を見ると、出発から一時間半ほどしか経っていなかった。
「それでですね…ちょっと耳を近づけてください。」
言われて私は耳を近づけた。内緒話のようだ。
「まだみんなには触れ回ってないんですけどね。私達の行く合宿所の近くにですね、地元でも知る人ぞ知る有名な廃屋敷があるんですよ。」