Cold Phantom [後編]
「ありがとう。」

「どういたしまして。」

そう言ってたけ君は、まだお茶の入っている段ボール片手に配り続けた。

「…」

なにも言えずに私は渡されたお茶のペットボトルを見ていた。

しばらくしてふと自己嫌悪な言葉を私は発していた事を思い出す。

でも…思い出したけど、何故か言った内容を覚えていなかった。

あまりにも無意識に言っていた。

そこに返された言葉に全ての意識を向かされたのかもしれない。

そう、たけ君の言葉だ。

いや、もしかするとたけ君の言葉ではないかもしれない。

あんなたけ君を見ていると不自然な言葉でしかないと思えたからだ。

でも、似ていた…

今、私に返された声がたけ君の声によく似ていた。

似ていたけど、ただそれだけ…

やはり不自然だった。

「気のせい、だよね。」

そう言って私は顔を上げた。

外は相変わらず木々の緑に覆われていた。
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