Cold Phantom [後編]
「また何かありましたら連絡してください。」

そう言って、長池先生は車内から手を振りアパートの狭い入り口から車道に出た。

俺もマリアさんもその車の後ろ姿を見送った。

先輩を発見してから既に4時間程が経過していた。

車が見えなくなって、マリアさんは大きく伸びをして俺の方に向き直った。

「さてと、彼氏はこれから帰り?」

「いや、まだ決めてないッス。」

そう返事すると、マリアさんは「そっか…」と言って、ポケットを探りキーを取り出した。

「今日の事は祥子ちゃんには内緒にしておかないとね。」

「え?」

そうマリアさんは言った。

確かにマリアさんの言う事は間違ってはいない。

俺も先輩には過去を出来るだけ気にしないように言った手前、何も言えなかった。

でも、何だか妙に気にしている自分がいた。

「祥子ちゃんは今を精一杯生きているんだし、それにあんな祥子ちゃん初めて見たから…だから危ない橋を渡らせるよりも、元気に生きていって欲しいんだよ。」

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