Cold Phantom [後編]
しかし、アパート前まで来てヒロ君と別れると…ふと頭をよぎる今ある問題が私に溜め息をつかせる。

「ほんと、どうしよ…」

私はアパートを見上げながら呟いた。

「後二週間か…」

しばらく私はそのアパートを見上げていた。

「?」
そこで私はふと気になるものを見つけた。

私の部屋から右に二つ目の部屋、二階の右隅の部屋の扉が何となく開いている様に見えたのだ。

遠目にははっきり解らないが、私が近づくとそれは確信に変わった。

扉が少しだけ開いていた。

不思議だった。
と言うのも、この部屋は今は誰も使っていないからだ。

そんな部屋なのに開いているのは正直不用心だ。

「なんで開いてるんだろ?」

そう言って私はドアノブに手を伸ばした。

「誰?」

ドアノブに手をかける直前になって誰かの声がして少し驚いた。

この声は聞き覚えがある。
と言うよりも顔馴染みの声だった。

「マリアさん?」

「あ、祥子ちゃんか。バイトは終わったの?」

そう言って階段を上がってくるマリアさんを見ていた。
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