Cold Phantom [後編]
バイトからの帰り道。

予想通りに風が強くなり始めていた。

夏の暖かい夜風も唸るような音で吠え出し、帰り道の歩道に並ぶプラタナスは襲いかかってくるかの様に暴れだし、落ち葉は風に反する事なく飛び散り出していた。

「こうして風が吹いてくると、台風が近くなってるんだなって実感が沸いてくるね。」

先輩は吹きすさぶ風に踊らされているプラタナスを見ながらそう聞いてきた。

「上陸は明日ッスけど、なんだかもう上陸してる気もしてくるッスね。」

「まだ上陸はしてないって聞いたけど、それでこの様子だったら、上陸した時は凄いだろうね。」

祥子先輩がそう言って、暴風の中をふらふらしながら歩き続けた。

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