赤い瞳の迷い猫
俺には家族もいなければ、親戚もいない。
数年前に他界した両親の顔は今じゃ、あまり覚えていない。
別に今としてはどうでもいいけど。
『家で小さな妹たちと、母親が待ってるんじゃないのか?』
一夏は立ち尽くしている夕緋に対して、むっとした表情でそう告げた。
長身のくせに立ち尽くしているその姿は、いっそのこと高く見える。
嗚呼、そうか。
俺を煽っているのか。
どうせ俺は、160cm程しかありませんよ。
「泊まるって言ってあるから」
『…は?』
顔は引きつり、妙な汗が噴き出る。
そして、嫌な予感は現実となる。
「君の家に」
そう言う夕緋の後ろには大きな荷物がきっちりと準備されていた。
「優しいもんね、一夏は」