時空の森と悪戯な風
どんどん時間が過ぎていくのに、未だに今朝のままの格好で、デートの準備なんてする気にもならなかった。
何で嘘を言ったんだろう…
アタシが見た人は、確かに圭介だった。
どっちかといえば、噂や運命的な物などは信じるタイプじゃない。
どこから“森の噂”を仕入れたんだろう。
そして誰に会い、何を訊いたんだろう。
16:00過ぎに着信音が鳴り響いた。
約束通り、圭介からだった。
『待たせて悪かったな…やっと酒が抜けた感じだ。これから行くけど、弥生の方は?』
気乗りしない。
やっぱり断ろうか…
そう考えたけど
「わかった…待ってる…」
そう言って電話を切った。
今日見た事は言わないでおこう。
嘘をついてる事も知らないフリしていよう。
とにかく、デートを楽しめばいいんだ。
“噂の森”の話は、しないでおこう。
そう決めると、急いでシャワーを浴びた。