時空の森と悪戯な風
その ー 森 ー
次の日の朝早く、噂の森へ向かった。
駐車場に車を停め、目的地まで歩く。
散歩してる人もいない、森の中は多分アタシだけかもしれない。
どんどん奥へ行くと、大きな木があった。
花が咲いてるわけでも、実がなってるわけでもないから、何の木なのか分からない。
「ここだったかなぁ」
辺りを見回してみる。
あの時はビックリして、場所なんて確認出来なかった。
“確か、会いたい人を思うんだったよな…”
大木に背中を当て、目を閉じて会いたい人を思った。
どれくらいの時間だっただろう…
サァーッと暖かな風が、アタシの頭を撫でるように吹いてきた。
『弥生…目を開けてごらん』
懐かしい声が聞こえた。
絶対に忘れない、アタシの大好きな人…
「お父さん…」
6年前に病気で亡くなった父が、光に包まれて立っていた。