時空の森と悪戯な風
「やっぱりって?聞いた通りって?」
智治の写真を見ても怒らない圭介が、少し怖かった。
「いや、いいんだ」
「よくない!意味わかんないもん!」
圭介は、ため息をつきながら
「噂の森で聞いたんだ。会った人に」
「会った人?誰よ?」
「弥生の亡くなったお父さん。この小箱の話をしてくれた。それと…」
「それと?」
圭介は少し考えて
「いや、いいんだ。それだけだ」
と言った。
お父さんから圭介が来た事は聞いていた。
でも小箱の話をしてたなんて…
「だから、確認したかっただけだから」
圭介の笑顔の中に、少し寂しさが見えたような気がした。
「じゃ、帰るから」
「うん…分かった。気を付けてね…」
引き止める事はしなかった。
忙しい中、父が言った事を確かめる為に来たんだし、帰ってからは多分、今後の事を考えるに違いない。
彼の車が見えなくなるまで、手を振りながら見送った。