時空の森と悪戯な風
引っ越す前日、智治が二人が写った写真の裏に、新しい住所を書いて手渡してくれた。
「また会えるから。お互いの場所の中間地点で待ち合わせしよう」
学生だった二人が出来るのは、これくらいだった。
「弥生、絶対に会えるから。それまで待ってて。」
まかさ、これが彼の最後の言葉になるとは…
彼と別れる時、姿が見えなくなっても、家に入る事が出来なかった。
あの角を曲がっても、チラッと顔を出しそうな、そんな予感と期待をしていたからだ。
でも、あの後ろ姿が最後の彼になるなんて…
思い出すたび、悲しみが込み上げる。
未だに信じられない。
智治の家の跡地を見たのに、それでも信じたくないアタシがいた。